みなかさんと寸借詐欺

 ある日の朝、たまに電柱につかまり、「イヤイヤイヤ(行きたくない)」と駄々をこねながら、バス停から歩いて職場へ向かうみなかさん。

 するとみなかさんの前方、道路わきに、エスキモーみたいな見た目のおじさん、がスタンバイしておりまして、みなかさん中身はサイコパスですが、外装はイケメン、優しそう、好青年、育ちがよさそう、魂のステージが高そう、なので、普段おばあちゃんとかにも道を聞かれる率が高く、

 「できれば素通りしたいけど、そうもいかないんだろうな」、と思いながら前を通過しようとしたら、やっぱりそのエスキモーさんに話しかけられまして、内容としては、

 「私は南のほうから来た(=エスキモーとは逆方向だった)、何日もごはんを食べていない、ちょっとでいいからお金くれ」ということで、昔のみなかさんなら500円とか1000円とかあげていたかもしれませんが、すっかり邪悪な大人になってしまったみなかさんでしたので、これはフェイクだろうと決めつけ、

 スマホを指さし、申し訳なさそうな表情をつくり、「全部これ(=スマホによるキャッシュレス決済)だから現金持ってないんですよ」と、華麗にスルーして出勤しました。キャッシュレス時代の意外なメリット、おじさんは口を開けたまま、何も言えずにこちらを見つめていました。

 「実は本当に困っている人だったんじゃないか」と、少し心は痛みましたが、手ぶらなのがちょっと引っかかり、みなかさんの勝手なイメージですが、ホームレス系の人は基本、荷物を全部持って移動している、という印象があり、

 手ぶらということはどこかにちゃんと拠点があり、気が向いたときにそこから出稼ぎに、というスタイルな疑惑があったのと、彼がわりともしょもしょと小声でしゃべるので、みなかさんだいぶ顔を近づけて話を聞くことになったのですが、異臭や口臭が感じられず、

 「ごはんを食べるお金がないのに、お風呂に入ったり歯みがきしたり、ということはできているのか?」と不思議だったことから、名探偵ミナンさんの判断は正しかったと思っていますが、

 「実は本当に困っている人だったんじゃないか」みたいな、後味の悪い感じ(100%嘘、と断定しづらい、人の良心を利用する感じ)、が、わりと最悪だなと思うので、もしイラっときてしまった場合には、「交番でお金借りれるらしいですよ。一緒に行って事情を説明するの手伝いましょうか?」と、少し攻めに出てもいいのかもしれません。

 みなかさん以前も公園で(読者様:「みなか狙われすぎじゃね?」)、「荷物盗られた」みたいな人に500円あげて(フェイクだろうとは思っていたが、ブログ記事にしたかったので。経費に計上すればよかった)、「もうちょっとくれ」みたいに言われた際、この方法を使って撃退した覚えがあります。

 そしてその日の職場の休憩時間、ごはんを食べようと外に出たみなかさん。行きはいなかったのですが、休憩帰りにまたエスキモーおじさんが、朝と同じ場所におり(よくよく考えたら、人が多いところのほうが効率がいいだろうに、駅前にいないのは、駅前には交番があるから=やっぱりフェイクだったのだろう)、

 そこでみなかさん、重大なことに気づいたのですが、エスキモーおじさんの定位置が、みなかさんが最近、休憩帰りに無糖カフェラテ(150円)を買っている自販機(キャッシュレス非対応)、の目の前で、みなかさん先述のとおりキャッシュレス設定になっていますので、いつものように自販機で無糖カフェラテを買えない。

 「ぐぬぬ」となりながらもみなかさん、エスキモーおじさんに会釈をし、職場のほうに戻ったら、なんと同じ無糖カフェラテが130円で売っている自販機を見つけ、20円得をした、ラッキー、というお話でした(ただその自販機、明らかにどこかの会社の敷地内っぽいところに設置されていて、

 その会社の福利厚生で割引価格になっているかもしれないので、部外者がカジュアルに利用していいのかちょっと微妙で、エスキモーおじさんにずっといられると困るな、と思うのでした)。